2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧
9月最後の日。大学のたまり場で話がはずむ。 「おい、今日で9月がおわるなぁ」 「ああ、ながづきの最終日だ」 「なんで長月?」 「古典で習ったろ?夜長月(よながづき)だからさ。日がだんだん短くなって、夜が長いっていうやつだろ」 「そうか、おれはま…
ふわぁ~と、いいかおり。 夕方、学舎から出て、悪友たちとの帰り道である。 いつものように、正門に向かって、坂道を下っていた。 A「なあ、いつもながら、ここらあたりは、いいにおいがするよなぁ」 B「におい、じゃなくて、かおりだろ。表現が悪い」 A…
秋のおだやかな昼下がり。 われわれのサークルは法律を勉強することを目的としている。 それとともに、実践編として、学生が法律相談会を開くこともその活動の一部であった。 法律相談会では、相談が多いのは、相続問題と土地家屋の賃貸借問題であった。 そ…
9月末、語学クラスが一緒の友人が、ふらふらで教室にやってきた。 授業がおわって、聞いてみると、岸和田だんじり祭りが済んで、やっと大学に来たという。 なんで、ふらふらになるまで、やるのかと聞くと。 「だってさ、あれはわれら岸和田っ子の晴れ舞台な…
4年生の秋、1週間ほど、悪友のひとりHが大学にやってこない。 みんなが心配しているなか、ある日、Hが久しぶりに、たまり場へ顔を出した。 青い顔をしているので、みんなが、「どうした、しなれない勉強でもしてたのかよ」と、口々にからかった。 H「うるさ…
卒業ゼミ生年度別の名簿を作成、この印刷本を作ることになった。 その役目のおはちが、現役ゼミ幹事のわたし、S、Iの三人に回ってきた。 わがゼミの教授は、わが世代までで22年目を迎えるが、その年数だけのゼミ生およそ100名以上を擁していた。 毎年、…
またまた、悪友たちとのはなし。 B「さんまの他に、秋の味覚ってなにかなぁ」 A「そりゃまぁ、いろいろあるけど、栗かなぁ」 B「あ、俺、栗ごはん大好き。ほくほくしてたまんないよなぁ」 A「木の実は昔からごちそうだもんな」 B「そうだっけ?」 A「何いっ…
大学のたまり場での悪友たちとのはなし。 「おい、『ぼたもち』と『おはぎ』はちがうのか?」 「いっしょだろ。春に食べるのが『ぼたもち』で秋に食べるのが『おはぎ』だろう。中身はおなじさ」 「なんで、呼び名がちがうの?」 「聞いたところでは、春は牡…
夕方、近くの小学校から、ピアノ音楽が流れてくる。 「あ、別れの曲だ」 「え、のりも、わかるのか?」 「ああ、あれだけはわかるんだ」 「えぇぇ!!クラッシック音痴の のりもが、正確に曲名を言ってる。奇跡だ!!」 「うるせえ、俺だって知ってるクラッ…
さんまという名がなぜついたのか、という話題に移った。 「さんまの『さ』というのは、狭いという漢字の読み、つまり、さ(狭)からきているそうだよ」 「なんで、狭いが関係するの?」 「ほら、さんまは細長いじゃないか。そこから『さまな(狭真魚)』って…
教養英語あとの時間。同級生同士が秋の味覚について話している。 A「秋はさんまに止めをさすなぁ」 B「いやぁ、まったけだろう」(大阪ではまつたけを、まったけと呼んだ) A「あれは、かおりだけじゃないか。酒飲みにはごちそうだろうけど」 B「いいや、ま…
われわれが、2年生のとき、顧問主事の教授が還暦を迎えられた。 われわれ2年生はサークルの執行部役員(といっても、いわば雑用係りであるが)となったため、先生のお宅を訪ねてサークルからささやかな記念品をお渡しすることになった。 さあ、何を贈るか…
昭和48年に「刑事コロンボ」がテレビで放映され始めた。 主演はピーターフォークである。さえないコートをいつも羽織っていて、これで事件が解決するのかという体でストーリーが進行する。 おどろいたのは、事件物のドラマであるにもかかわらず、最初から…
9月の半ば、まだまだ暑い。 悪友KとMと一緒の電車の中。 今日はサークル活動もなく、午後2時に帰途についた。 K「おい、今日はめずらしいコーヒーを飲みに行こうぜ」 M「あ、前からおまえ行きたいっていってた店だろぅ。つきあう」 K「のりもも行くだろぅ?…
われわれがこどもの時代には、「月極」(つきぎめ)ということばがよくつかわれた。 特に、家の周りには「月極 モータープール」という看板がよく掛かっていた。 この月極というのは、1か月でいくらのお金を払うという意味、もっといえば、月額での支払を意…
さて、仲間内での話し。 東洋法制史をゼミに選んだ、後輩のハチヤ君との話し。 私「おい、ハチヤ。明日は中秋だよな。お月見はするのか?」と何気なく尋ねると、 ハ「先輩、なんでですか?」 私「だって、お月見の風習は中国から来たって習ったぜ。あんたは…
お月見でススキとお団子を供える。 なぜだろう? お彼岸のときに、お墓詣りのついでに、わが家の墓があるお寺のご住職に、母親がたずねている。 「さて、わたしも詳しくはないんですが、旧暦の慣行で、月は満ち欠けによって農家さんはその農作業をなさるでし…
昭和52年の9月。この日も名月であった。 ある場所で友人との帰り道、「月の沙漠」を鼻歌でうたっていた。 友人が 「なにをこどものような歌をうたってんだよ。月の歌なら、これだろぅ」 ♪月夜のうみにぃ~ 二人の乗ったゴンドラが~ 波もたてずに すべっ…
9月中旬、サークルの研究会が終わって悪友たちと、駅へと急いでいた。 前の空に煌々と真んまるなお月さまが顔をだした。 だれかが、 ♪ つきのぉ~ さばくを~ はぁるぅうばるとぉ~ 旅のぉ~ らくだがぁ~ ゆぅき~ ましたぁ~ ♪ と歌いだした。 「おい、こ…
悪友Kが、4年の夏ごろから、なにか様子がおかしい。 妙にはしゃいだかと思うと、ときおり、なにやら一人で考え込んでいる。 1年生以来の付き合いである。 将来どうするかという話もずっとしていて、 Kは何らかの資格を取って、いわゆる『士』業で身を立てる…
3年生の秋。 わが家の電話が鳴る。 階下から、母親の声がする。 「よしあき、電話。五木君のおかあさんからよ」 五木と顔を見合わせる。 「え、なんでここが分かったの?」 おそるおそる、わたしは、電話をとる。 「はい、のりもです」 「のりもくん?うちの…
悪友とのはなし。 A「おい、菊花の約っておぼえてるか?」 B「うん?なんだよそれ?」 A「上田秋成作の『雨月物語』のなかに出てくる話だよ」 B「あぁ、中学生のときに全集で読んだなぁ。義兄弟の約束をした二人が9月9日に再会することを約束しながら、義…
試験終了のベルとともに、仲間たちが、たまり場の広場に集まってくる。 残暑の真っただ中。 A「あつい!あつい!」 B「ああ、蒸し風呂教室だもんなぁ」 A「集中できないなぁ。それに全然できないや」 B「それは、おまえの勉強不足!」 A「そう言うなよ。きの…
悪友なかまたちとの話し。 A「おい、英語の先生が言ってたんだけどさ。9月 Septemberの語源はseven 7だって知ってた?」 B「知らない。なんで?」 A「ローマでは、暦は3月からはじまって、そうすると、9月は七番目に来るじゃないか。だからだってさ」 B「…
二百十日 にひゃくとおか 立春から二百十日目、二百二十日目は台風がくることが多いということを小学校でならっている。この二百十日目というのは、9月初旬に当たる。 悪友たちと話している。 A「おい、台風手形って知ってるか?」 B「なんだよそれ?」 A「…
大学での先輩後輩のはなし。 A「先輩、法学の学説解説に通説、多数説、少数説、有力説っていう用語がでてきますよね。あれは、どう区別されているんですか?」 B「うん、通説っていうのは、いわば『とおり相場』っていうぐらいのことさ。たとえば、富士登山…
久しぶりに、図書館前の広場にみんなが集まっている。 「ああ、夏休みがあけたなぁ」 「うん、さてまた講義がはじまるのかぁ」 「それはそうとさ、いつから前期試験がはじまるのかねぇ」 「ああ。1週間後からだぜ」 「なんで、わかるの?」 「もう、日程が…
うおおおおおおおぉぉぉおおぉおおぉぉぉぉ・・・・・ 歓声とともに、白いボールがスタンドへ弧をえがいて飛び込んでいった。 昭和52年9月3日土曜日の夜である。 予想はされていたのであるが、 王貞治氏が 日米を通じてのプロ野球ホームラン記録を塗り替…
9月になると、サークルの部室に合宿でのスナップ写真が、白い模造紙を台紙にして、番号を点(ふ)って張り出される。 それぞれが、ほしいと思う写真の番号を庶務の後輩に告げて、スナップ写真を手に入れるのである。 後日、代金と引替えに焼き増しした写真…
昼休み、9月ついたちの学部教室近くの食堂は、ごったがえしていた。 あちこちで、 「おう、ひさしぶり」 「げんきかぁ」 「おい、真っ黒やなぁ」 といった、ごぶさた会話が飛び交っている。 やっとこさ確保した食卓に、7・8人の同期が定食のトレーを持っ…