夕方、近くの小学校から、ピアノ音楽が流れてくる。
「あ、別れの曲だ」
「え、のりも、わかるのか?」
「ああ、あれだけはわかるんだ」
「えぇぇ!!クラッシック音痴の のりもが、正確に曲名を言ってる。奇跡だ!!」
「うるせえ、俺だって知ってるクラッシック曲もあるさ」
「おい、なんで知ってんだよ?」
「実はさ、あれと同じ曲が小学校で退校時間にいつも流れて、そのとき、担任の先生が、作者と曲名を教えてくれたんだ」
「なるほど。『三つ子の魂百まで』だな。のりもでも、覚えるんだもんなぁ」
「妙な感心をするなよ。」
クラッシック好きの悪友のウンチクが続く。
「この曲はな、練習曲作品10第3番ホ長調といわれるのが正式で、別れの曲っていうのは、1930年代のドイツ映画『別れの曲』でこの曲が使われたことからだってさ。一般にはTristesse(悲しみ)といわれて、秋によく演奏されるので有名なのさ」
へえええぇぇぇぇ・・・・・・
ピアノ鳴るうかれ落葉の風に舞ふ(上村占魚)