9月になると、サークルの部室に合宿でのスナップ写真が、白い模造紙を台紙にして、番号を点(ふ)って張り出される。
それぞれが、ほしいと思う写真の番号を庶務の後輩に告げて、スナップ写真を手に入れるのである。
後日、代金と引替えに焼き増しした写真を受け取る。
ある日。悪友たちと部室にいたとき
H「おれ、3・8・9・12・30がほしいから、たのむ」
と掛かりの後輩に写真番号を言っている。
そうすると、
Sが
「あれ、H、12はお前どこにも写ってないじゃないか?なんで?」
H「いいんだよ。今年の記念に、合宿地の景色のあるのも買って、残しておくんだから」と。
わたしは、横で聞いていて、確信した。
その写真には、ちょっと山口百恵に似た、後輩のM嬢が写っていたのである。
Sはけげんそうな顔をしている。
わたしは、こころのなかで、
「武士のなさけじゃ、H。だまっててやる・・・・」
蛍火の消えて走れる恋ごころ(和知喜八)