9月最後の日。大学のたまり場で話がはずむ。
「おい、今日で9月がおわるなぁ」
「ああ、ながづきの最終日だ」
「なんで長月?」
「古典で習ったろ?夜長月(よながづき)だからさ。日がだんだん短くなって、夜が長いっていうやつだろ」
「そうか、おれはまた、夏と冬の真ん中にあるから『なかづき(中月)』・・なかづき・・・ながづきになったのかと思った」
「そんな説はないだろう。中っていう字が長いに変換するわけは、ないじゃないか」
「だけど、発音だけからいうと、変わる可能性はあるぜ」
「どうして?」
「『なかつき』っていうのは、言いにくいだろ。だから『なかづき』と言うようになって、さらに『か』っていう音は、二語がくっつくときは、濁音に変わりやすいという特色があるだろ。だから、『なか』ぷらす『つき』は『ながづき』となる」
「へ理屈いうなよ!!中(ちゅう)くらいのものは、長くはならねえんだよ」
「おい、おまえのも、わけのわからん理屈だろうが・・・・・」
空には、月ならぬイワシ雲が出ていました。
長月の今日のひと日の紅を恋ふ(池内友次郎)