昭和52年の9月。この日も名月であった。
ある場所で友人との帰り道、「月の沙漠」を鼻歌でうたっていた。
友人が
「なにをこどものような歌をうたってんだよ。月の歌なら、これだろぅ」
♪月夜のうみにぃ~
二人の乗ったゴンドラが~ 波もたてずに すべって ゆきます~
そんなそんな夢をみましたぁ~・・・・・
三日月もよう~ 空がとがって ゴンドラも~ ・・・・・・・♪
(「夢先案内人」歌:山口百恵)
「まてよ。こんな都会の真ん中の名月に、海の月はおかしいだろう」
「そんなことはないだろ。お前だって砂漠じゃなくて、沙漠なんだから、砂浜なら海でいいわけだろ」
「それじゃあ、今のお月様はまん丸なのに、お前のいう百恵ちゃんの歌は、三日月じゃないか。ここは論理的に、はなしがつながるように説明しろよ」
「うん、わかった。三日月もモモニチ(百日)を経ると満月になるだろう。新月から満月まで1回だいたい15日だもんな。百恵ちゃんが歌ってんだから、同じくモモを経ているのさ。だから百恵ちゃんの場合は、三日月を唄えば満月」
「おい、それは無理オチだろう・・・・・」
満月は枯野を照らす策よりなし(橋本夢道)