ある大学の講師控室で、国文学者F先生と雑談をしていた。
F「やれやれ、やっとあったかくなってきましたねぇ。桜も散ってしまったけれど、これからの季節は百花繚乱だからねぇ・・・」
私「『つつじ、さつき』っていうところですかねぇ」
F「それもあるけれど、
『立てば芍薬、座居(とい)すりゃ牡丹、歩きすがたは百合の花』ってね。
知ってますか?」
私「ええ・・・子供の頃、『とい』じゃなくって、『座れば』ってフレーズでなら、
よく聞きましたけど・・・
それって美人のたとえを花にあらわしたものじゃないんですか?」
F「そうですね。だけどこの芍薬、牡丹、百合はだいたい4月から5月に咲き出す艶やかな花で、開花時期はほぼ同じなんですよ」
私「へぇぇぇ~~~・・・知りませんでした。ということは、花鳥風月を愛でる歌人なんかが言いだしたんですかね?」
F「それがね、元は江戸時代の滑稽本なんですよ」
私「え、あの『東海道中膝栗毛』なんかと種類が同じなんですか?」
F「そうですよ。だけど語呂がいいでしょ。ちょっと粋だから、都都逸なんかでも唄われてたようですね。
江戸後期の諺語辞典『譬喩尽(たとえづくし)』にも出てるんですね」
私「なるほど、調子がいいのはわかりますねぇ。
プロ野球のヤジでも
『打てば三振、守ればエラー、走る姿はボケの花!!!』
って揶揄するヤジがありますもんね」
F「・・・・・・・・」
白牡丹 といふといへども 紅ほのか(高浜虚子)