悪友Kが、4年の夏ごろから、なにか様子がおかしい。
妙にはしゃいだかと思うと、ときおり、なにやら一人で考え込んでいる。
1年生以来の付き合いである。
将来どうするかという話もずっとしていて、
Kは何らかの資格を取って、いわゆる『士』業で身を立てるつもりであるはずであった。
Kなら、その能力もあるし、できるだろうと私をはじめ、悪友一同は考えていたのである。
ところが、
8月のおわりぐらいになって、急に
「やめた。俺、就職する!」と言いだした。
みんなは、また、Kの冗談きまぐれかと、思っていたが、どうやら、本気のようだと分かるのが、9月。
10月1日の就職試験解禁日に向けて、猛烈に準備し始めたのである。
そのとき、わたしは、「うん・・・・、なんでだろう?長男としての責任感であろうか?1年生のときから言ってたことと、ちがうじゃないかぁ」と、
妙にKから取り残されたような気がしていた。
いつか、Kに「なんで、心がわりしたんだよ?」ともう一度聞いてみたいと思うのだが・・・。
その後、Kはあの相変わらずの軽妙な会話をしながら、われわれと雑談を交わし、残りの大学生活を謳歌していた。
笹鳴りや大望の身の懐手(佐々木有風)