さんまという名がなぜついたのか、という話題に移った。
「さんまの『さ』というのは、狭いという漢字の読み、つまり、さ(狭)からきているそうだよ」
「なんで、狭いが関係するの?」
「ほら、さんまは細長いじゃないか。そこから『さまな(狭真魚)』って言われてて、これが細長いさかなを意味したんだってさ。
『さ』プラス『さかな』でさまなになったんだろうっていわれてるよ」
「さまな・・さまな・・さまな・・さんま、か。なるほどね」
「さんま漁は、江戸時代からはじまったといわれてて、そのとき、さんまが河岸に入荷するとお祭りさわぎだから、魚へんに祭りと書いて、さんまって読んだんだってさ」
「へーえ、今、そんな字、使わないだろう?」
「ああ、だから明治になって、あの夏目漱石が『吾輩は猫である』のなかで、さんまっていう字が確定してないから、音(おん)をもとにして『三馬』っていう字を当ててるよ」
「だけど、今は、さんまは、秋刀魚って書くのがふつうじゃないか?」
「あれは、秋によくとれる魚で、さっきも言ったように細い魚だから、刀の字をあてただけで、大正時代から使われだしたものさ」
「なんだぁ。俺はまた、落語の『目黒のさんま』のように、殿様がさんまを気に入ったから、武士の象徴たる刀と秋の魚とをあらわして、秋刀魚と書くのかと思った」
「・・・・・・」(そんなわけないだろう・・・・)
人を刺す太刀の光の秋刀魚かな(鈴木真砂女)