悪友とのはなし。
A「おい、菊花の約っておぼえてるか?」
B「うん?なんだよそれ?」
B「あぁ、中学生のときに全集で読んだなぁ。義兄弟の約束をした二人が9月9日に再会することを約束しながら、義兄が城に閉じ込められて、約束を果たすため、切腹して会いに来るというやつだろ」
A「おっ、覚えてるじゃないか」
B「『走れメロス』をまねた、日本版奇譚(きたん)だろ」
A「こらこら、メロスは生きて帰ってくるじゃないか。それに『走れメロス』の方が作品としては新しいんだから、まねているのはメロスの方だろぅ」
B「それでもさ、死んでも義弟との『約束を守る』という話しと、約束を守って友人の命を助けるというのと、『約束が大事』ということを強調する物語の中核としては、どちらもおなじじゃないか。西洋の陽と日本の陰が対比されるだけだろう?」
A「うぅぅん・・・『走れメロス』の作者は太宰治だろぅ?あの作品は破滅型の太宰が、めずらしく、昭和13年という結婚年の一時期の、精神的に安定したときに書いたものだから、雨月物語のような、死をもって結果を出すという発想は、ないはずなんだ・・・うまくいえないが、やっぱり、ちょっと違う気がするなぁ・・・・」
末永う二人三脚菊の酒(高澤良一)