norimoyoshiakiの日記

昭和40年の後半からの学生生活と、その後のことを日記にしています。ご意見をお待ちしています。

家出

 3年生の秋。

わが家の電話が鳴る。

階下から、母親の声がする。

「よしあき、電話。五木君のおかあさんからよ」

 

 五木と顔を見合わせる。

「え、なんでここが分かったの?」

 

 おそるおそる、わたしは、電話をとる。

「はい、のりもです」

「のりもくん?うちの息子がお世話になってるでしょ?」

「いえ、いませんよ」

 

「・・・・。ま、いいわ。伝えておいてね。自分勝手に出て行ってもしかたないし、それじゃあ、生活に支障をきたすでしょ。問題がなんにも解決しないから、とりあえず、帰ってくるようにって。じゃ、お願いします」

と言って、電話が切れた。

 

 二階に戻って、このことを五木に言う。五木は青い顔をしている。

五木は、年上の彼女との交際と将来について、ご両親の大反対で大喧嘩になり、わが家に迷い込んでいた。

 

 わたしの母親には、このことを言わず、しばらく、五木を泊まらせることだけを頼んでいた。

 それから、ほぼ1週間。

 

 みごとに、わが家を、五木のおかあさんがさがし当てたのである。

われら友人は、誰も、彼のおかあさんと連絡をとっていない。

わが家の電話番号も、ご存じないはずであった。

 

「え、どうしてわかったんだ?」 

「お前の、行動パターンが読まれてるんだよ」と、わたし。

青い顔のまま、五木は小さい声で

「今日、いちど家へ帰るわ・・・・」

 

 おかあさんの手のひらで走り回る五木であった。

 お釈迦様と孫悟空みたい・・・・

 

    家出とは出家の初め梨の花(山崎十死生)