♬ 乾いた空を 見上げているのは誰だ
お前の目に 焼きついたものは化石の街・・・・
残されたものは出発(たびだち)の歌
さぁ今 銀河の向こうに 飛んでゆけ・・・・♪
作詞:及川恒平 作曲:小室等)
昭和55年のYの部屋。ラジオから豪快な声での歌が流れる。
Y「おぉ、なつかしい・・・たびだちのうた かぁ・・・。
これ俺らが高校生のころの歌だろ?」
私「ああ。
『つきひは はくだいの かかくにして、ゆきこふ ひとも みなたびびとなり』
ってな」
Y「なんだよそれ」
Y「それがなんで、今なんだよ」
私「このDJが今、言ってたじゃないか。
今日、芭蕉が奥州へ旅立った日なんだって」
Y「そうなのか・・・しらべてみよ・・・ええっと・・・あった・・・
江戸深川の自宅庵から奥州に向けて出発』。
新暦の・・・ああ5月の今日か」
私「旅立ちの高揚感っていっしょなんだろうな、今も昔もさ。
♪さぁ、今ぁ~銀がぁのむこううぇぇぇ~~~とんでゆけぇ~!
なんてさ」
Y「だけど、奥州なんだから人も居れば旅籠もあるだろ。
そんな大騒ぎするほどのことか?
銀河旅行なら命がかかるけど、芭蕉の時代ならそんなことないだろ?」
私「うん?よくわからんけどさ。今のような旅じゃないもんなぁ。
ある文学の先生から聞いたんだけど、
江戸時代の人の寿命って50歳くらいで、
芭蕉はこのとき、44か5歳くらいなんだってさ。
もう晩年なんだよな。
あと何年生きるか分からない年齢で、奥州を徒歩で旅するわけで、
生きて帰れるかどうか分からない。
それでも奥州は芭蕉が尊敬する西行に、ゆかりの深い土地だから、
どうしても行ってみたいところなんだって。
最後の命の炎を、この旅で燃やすんだろうってさ」
Y「・・・さいご・・・かぁ・・・」
あらとふと 青葉若葉の日の光(芭蕉)