大学地下食堂での中国法制史専攻のハチヤ君との話し。
ハ「のりもさん、
『若葉して御目の雫拭はばや』
って句、知ってます?」
私「え?」
ハ「芭蕉の句ですよ。どこかに、この句を刻んだ石碑が立ってるんですよね。
どこでしょうか?」
私「えぇぇ・・・知らないなぁ・・・」
ハ「ヒント。奈良、盲目、唐」
私「ぁぁ・・・ひょっとして鑑真・・・ということは唐招提寺?」
ハ「ご名答。今日は鑑真和上の亡くなった日なんですよね。芭蕉もこの時期に唐招提寺に御参りして、句作したみたいですねぇ」
私「なるほど、『若葉して』だもんなぁ・・・」
ハ「でしょ。私の師匠なんかと話してたんですけどね。
単純な口語訳は
『今まさに青々とした若葉が茂っている。そのような若葉で鑑真和上の盲いたお目から
流れ落ちる涙をぬぐってさしあげたいものだ』
っていうくらいの意味になるんですよね」
私「うん?」
ハ「直訳だと、意味がわからないでしょ?」
私「ぅンンン・・・・」
ハ「師匠が言うのにはですね。
芭蕉が和上の彫像を見て感激してること、
雫が落ちるというのは、涙じゃなくて和上の徳知がしたたり落ちているという象徴であること、
その恩恵が青葉とともに五月の光のなかで輝いていること。
っていう、芭蕉の感動表現なんだそうですよ」
私「・・・ぉぉぉぉ・・・・・・」
たちばなの香にこそ匂へ鑑真忌 (下村梅子)