少年雑誌の表紙に美少女のタレントが登場することが、昭和50年代半ばから多くなったときのこと。
アイドル大好きのハチヤ君と話していた。
ハ「このごろ、少年漫画って買うの楽しいですねぇ」
私「どうして?」
ハ「だって、♪少女Aとか、♪制服のむねのボタンを~なんて歌のアイドルが表紙ですもん。楽しくって」
私「ははは、百花繚乱、いずれ『あやめ』か『かきつばた』ってとこかぁ」
ハ「のりもさん、古~~~ぃぃ~~。いまどき、『いずれあやめかかきつばた』なんて言わないですよ。まるで、うちの師匠が言ってるみたい。だけど、あやめとかきつばたの違いって知ってます?」
私「うん?ほぼ同じじゃないの?」
ハ「ちがいますよ。うちの師匠に言われて調べたんだから」
東洋法制史を勉強するハチヤ君は、中国文化とのかかわりで日本文化を調べることがよくあった。
ハ「だいたいね、初夏にかけて咲くむらさき色の花は、アヤメ、カキツバタ、ハナショウブの三つがあるんですね。それで、この三つはよく似ていて、咲く時期もちょっとづつ違うんだけど、ぜんぶ、高貴な色の紫でしょ。それで、昔から歌にもなったりして、ひとに愛されたっていうんですよ」
私「うん、なるほど」
ハ「だから、アヤメとかカキツバタっていうのは、もう少し年長というか『臈長けた』感じじゃないと、合わないんですよ。ということはですよ、表紙のアイドルはアヤメ・カキツバタっていうよりもですね、もう少しかわいい小さな花で・・・・」
そこかよ。
彼のアイドル解説は延々と続きました・・・・
・・・ははは・・・
あやめ咲く汀のみたき遠まわり(久保田万太郎)