昭和54年ごろのこと。ハチヤ君と地下食堂でたまご丼を食べていた。
私「さむいなぁ・・だけどうまい・・これ・・
『冬ざれの厨に赤き蕪かな』(子規)・・・なんてね」
ハ「のりもさん、それは黄色のたくあんですよ」
私「ははは・・・ま、大根類ってことであまり変わんないだろ」
ハ「だけど、『冬ざれ』っていう季語は、いまの時期にぴったりでいいですねぇ」
私「そうだよな。このまえ、
『ふゆざれ』って調べたら、
『見渡すかぎりの冬景色』っていうことなんだってね」
ハ「そうですよね。だけど
冬ざれっていうのは、『冬され』の誤用だって いわれてますね」
私「あれ・・・そうなの?」
ハ「ええ。ただこの『さる』っていうのは
行ってしまうっていう意味の『去る』じゃなくて、
『さ・ゎ ある』ってことで、『そういう状態にある』
っていう意味じゃないかっていわれてんですね」
私「お、ハチヤ節がはじまったぞ。それで?」
ハ「もぉ。でまあ、
万葉集でも『秋されば雁飛び越ゆる龍田山たちても居ても君をしそ思ふ』
なんていう恋歌があって、
『秋され』の『さる』が『そういう状態にある』ってことで
『やってきた』ってことを意味するんだそうですよ」
私「へぇぇ~ 『ある』と『行ってしまう』じゃ正反対になるよなぁ・・・
なるほどぉ」
ハ「さ ゎ ある(差はある)!!なんてね」
私 「・・・・・・・・・・」
冬ざれの たまごのかほり ないまぜに(のりも よしあき)