norimoyoshiakiの日記

昭和40年の後半からの学生生活と、その後のことを日記にしています。ご意見をお待ちしています。

香り

 国文学専門のF先生と大学から最寄り駅へ帰る夕方。

なにやら、小さな白い花が咲いていた。

しかし、香りはというとどうもそれほど、かぐわしいものではない。

どちらかというと、臭いという方がただしいであろう。そのとき、F先生が・・・

 

F「『何の木の花とは知らず匂哉』」

私「え?なんですか?」

 

F「芭蕉の句ですよ。

  あなたいま、この花を見て何の花だろ?臭いなぁって思ったでしょ?」

私「ええ・・・」

 

F「この花はね、ユキヤナギっていう古来からある花でね。

    3月くらいになると最盛期で今つぼみですが、

       きれいな白い花いっぱい咲かせるんですよ。

                   ただ、においが強烈でね」

私「そうなんですか・・・」

 

F「それでね、芭蕉のこの句ですけどね。

  『笈の小文』にあるんですが、

        芭蕉伊勢神宮を参拝するときに作ったっていわれるんですよ」

 

私「え?神宮参拝と匂いがどう関係するんですか?」

 

F「うん、一説によるとね、西行

  『何事のおわしますかは知らねどもかたじけなさに涙こぼるる』

                  を本歌にしていてるんだというんです」

 

私「芭蕉西行を尊敬してたのは知ってますけど・・・

           西行の歌と芭蕉の句が・・・どうつながるんです?」

 

F「さぁぁ、たぶん、

  西行が万物自然に神が宿るのを感じるって詠ってるのを、

     芭蕉伊勢神宮に入るときに

   まわりの樹々の神々しい香りに、自然の神霊を感じてるんでしょうね?」

 

私「・・・・へえぇぇ~~

   (だけど 落語でいえば『考えオチ』じゃないのかなぁ)・・・・」

 

    冬夕焼 きりきり燃えて ぺかと消ゆ(山口青頓)