昭和53年の正月明け。
ハチヤ君たちと、久しぶりに大学地下食堂で昼ごはんをとっていた。
ハ「のりもさん、いいお正月でしたか?」
私「まぁまぁだね。だけどレポート書きで家から出れなかったから、運動不足でね」
ハ「そうでしょうね。食べて寝てレポート書いてるだけですもんね」
私「あんただって、そうだろ?ところで、今、トンカツ食べてるけど、あんたの師匠は神官だろぅ?その弟子が、松の内に四つ足を食べてもいいのかぃ?『精進』料理じゃないのか?」
ハ「もぉぉぉ~~。またからかうんだから。師匠と僕は人格が別ですからね。尊敬はしてますけど、生活態度が全く同じじゃなきゃならないってわけじゃないんだから・・・」
私「ははは・・・」
ハ「それなら言いますけどね、『精進』ってどういうことか知ってます?」
私「え?肉食をしないことじゃないの?」
ハ「ちがいますよ。それは、室町時代くらいからの精進料理を指すときの意味ですよ。精進っていうのは、本来、仏教の教えでの『精魂こめてひたすら進むこと』っていう意味しかないんです。それが民間の在野仏教に伝わったときに、魚中鳥獣を食べないで『斎戒沐浴』の生活をするということに変わっていって、神道にもその影響を与えたっていわれてるんです」
私「へぇぇぇ~~~・・・しかし、よく知ってるなぁ・・・」
ハ「歴史好きの常識です!」
私「ちがう!!!あんただけの常識です!!」
ハ「・・・・・・・」
いささかの塵もめでたや事始(森川曉水)