昭和58年ころのこと。
久しぶりに大学のロビーで、大学教員をめざしている同期で刑事法専攻のOと出会った。
私「おぅ、久しぶりだなO」
O「おおおぉ、のりも。いつもすれ違いで、めったに会わなくなったもんなぁ」
私「それで、今日はどうした?こんなに早く何か用か?」
O「ああ、就職のために書類をそろえるのに必要だから、事務室へ来たんだよ」
私「そうか。決まりそうか?」
O「今日の日付」
私「え?なんだよそれ」
O「1月8日の『イチかバチか』」
私「もぉ・・・こんなときまで、シャレ三昧かよ・・・」
O「ははは・・・ま・・ちょっと話そうか?久しぶりだしさ」
ということで、大学の喫茶室でカップコーヒーを飲みながら話をすることになった。
いろいろ話していると、Oはあちこちの大学の教員採用に応募していて、いくつかは手ごたえがありそうであった。そんなこんなの話しをしていて、
私「ところでさ、お前がさっき言った『イチかバチか』ってなんで一と八なんだろ?」
O「うん?知らないのか?丁半ばくちから来てるんだよ」
私「え?どういうこと?ばくちに使うサイコロだったら、一の反対は六だろ?」
O「そうじゃなくて、丁半っていう字から来てるんだよ。いいかぁ、
丁半の『丁は一に縦棒ハネ』だろ。
『半は漢字の八に二の字を書いて、縦棒を引く』じゃないか。
その丁のはじめの『一』と半の『八』をとって『一か八か』っていうんだよ」
私「ああ・・・いわゆる ひとに わからないようにする隠語か・・・」
O「まぁ、はじまりは、そうだったんだろうなぁ」
私「おい、刑法って犯罪にかかわることなら、なんでも勉強するんだなぁ」
O「ばか、これは俺の教養だよ」
私「・・・・ははは・・・・」
双六の上がりの賽は掌中に(石原君代)