昭和54年ころの12月。
Yの部屋でテレビを見ていると、正月用のブリを採る漁場映像が流れた。
Y「お、寒ブリかぁ・・・・うまそうだなぁ・・・」
私「ははは、くいしんぼうの本領発揮!」
Y「うるせえ、俺は、うまいものを上手に味わおうっていう求道者なんだよ」
私「どうちがうんだよ。一緒だろ?」
Y「誰かさんみたいに、はらいっぱいになったらそれでいいってわけじゃないんだよ。内容と質がちがうの!ところでさ、このブリって出世魚っていわれてるのって知ってるか?」
私「ええっと・・・なにか聞いたことあるよなぁ・・・」
Y「俺の行きつけの居酒屋のおやじが言うにはさ、ブリは成長によって名前がちがってさ、『ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ』って言うんだってよ」
私「うん・・・で?」
Y「それでな、なんで出世魚なんだって聞いたらさ、昔は、武士は成長して元服したり、地位が上がったら名前を変えただろ。たとえば、徳川家康なんて竹千代から元康、家康って変えてるじゃないか。あれと同じなんだよ。いわば縁起がいいんだってさ」
私「なるほどなぁ・・・だけどさ、それなら鯛は?鯛は縁起のいい最たるものだぜ。なんで名前が変わんないの?なんで?」
Y「・・・・(知るかぁ・・・ガキめ)・・・・」
寒鰤は虹一筋を身にかざる(山口青頓)