昭和53年11月ごろ、大学の坂道をしゃれ者Oと学舎に向かって登っていた。
O「ううぅぅぅ~~~しみるぅ~~~。まともだもんなぁ。北風が吹きつけてくるぜ」
私「ははは、冬の入り口だもん。それに今日は二十四節気でいう小雪だってさ」
O「しょうせつ?作者はだれ?」
私「何言ってんだよもう。時候をあらわす小雪だよ。ちいさいゆきって書くんだよ」
O「つまんねえ・・・。暖かくなるわけじゃなし」
私「そう言うなよ。暖かくなる鍋の季節がはじまるじゃないか。おまえ、先週、刑事法の輪読会帰りにカニ鍋を食べることになったって言ってただろ。どうだった?」
O「うん、なんにも会話がなかった」
私「なんで?」
O「みんながカニを剥くのに、せいいっぱい」
私「・・・・(カニは無口にするもんなぁ)・・・・」
寄鍋や矛をむけたる蟹の爪(阿波野青畝)