昭和52年秋、大学の坂道をしゃれ者Oと学舎に向かっていた時。
O「やれやれ、またこの坂かよ、大変だ」
私「はは。だけど涼しくなってきたから、ちょっと楽だろう?そういやぁ、今日は『霜降』だってな」
O「ソウコウ?」
私「ああ、『しも』と『ふる』って書く、二十四節気のソウコウだよ。秋分から立冬までの時期で、露が冷気で霜になってあらわれる時期だってされてるんだってさ。天気予報で言ってたぜ」
O「へぇぇ~。霜に降なら『しもふり』だろぅ?しもふりっていえば、『牛肉、りんご、ぶどう』って方が、実が成ってよくないか?」
私「え?牛肉の『しもふり』って分かるけど・・・りんごやぶどうってなんだよ?」
O「うん?知らないのか?りんごでもブドウでも、完熟前に収穫するのが普通なんだぜ。それを完熟するまで、もがずに置いておいて、霜が降ってから刈り取るんだ。そうすると、すごく甘くなるんだよな。ドイツなんかじゃそうした実で作ったワインをアイスヴァイン(Eiswein)って言って、高級ワインになるんだぜ」
私「へぇぇぇ~~~・・・知らなかった・・・」
O「お、ソウコウするうちに頂上へ着いた!!かんぱい!!!」
私「・・・・(なんだよ、それ)・・・・」
霜降の秋をやわらかくひくく(正木みえ子)