昭和53年ごろ。
11月23日の休日、Yの家へ にぎり飯を持って出かけた。
私「お~い、いるかぁ?昼めし持ってきてやったぞ」
Y「お、なんだなんだ、トンカツか刺し身か?」
私「何言ってんだよ。おにぎりだよ。新しく出た、おにぎりで、新米だぜ。新嘗祭だからぴったりだろう?」
Y「まったく、お前は・・・言うことが古いなぁ・・・勤労感謝の日じゃないか」
私「いいだろ、趣旨はいっしょなんだぜ。五穀豊穣の感謝日で、新米でのお祭りと、労働に感謝する日なんだから。食べようぜ」
Yが、台所からお茶を淹れて持ってきた。ビニール袋から三角形のおにぎりが取り出される。
Y「よし。ええっと・・・このセロハンは頭番号の①から破いて・・・うん③でおわり・・・」
私「おう、うまいもんだなぁ・・・そうやって剥くのかぁ・・・・」
Y「なにやってんだよ、のりも。おまえ、海苔が半分いじょう破れて、ぐちゃぐちゃじゃないか。相変わらず手先が不器用だなぁ・・・」
私「いいだろ。食べれば同んなじだよ」
Y「まったくぅ・・・こどもかぁお前は」
私「いいんだよ。このおにぎりが新米なら食べる側も新米で!!」
Y「・・・・(ばか)・・・・」
何も入れない新米のにぎり飯(岸 三恵)