昭和54年11月18日夜、Yの家で話していた。
Y「なぁ、東京で初めて女子だけで走る、国際マラソンが開催されたろ。見たか?」
私「え?いや、出かけてたから見てないよ。なんだよ?」
私「そんなに、何回も言わなくっても・・・何を興奮してんだよ」
Y「まったくぅ、よんじゅうにぃてんいちきゅうごキロだぜ・・・国鉄大阪駅から向かって行ったら、ほぼ京都駅までの距離なんだからな。昔から、女子にマラソンは無理だっていわれてたんだぜ。ちょっとは感動しろよ」
私「ああ・・・たしかにすごいよなぁ・・・その距離を走るのかぁ・・・
それで、優勝者とタイムはどうだった?」
Y「ええっと。優勝はイギリスのジョイス・スミスさんでさ、タイムは・・・2時間37分48秒だな。日本男子のトップクラスでも2時間20分台なんだから、たいしたもんだよ。2時間台だぜ・・・お前なんか、5分走っただけでひっくり返ってるだろ」
私「うるせえ、しろうとの俺と比べるな。お前だって変わらないだろうが」
Y「ははは、だけどよかったぜ。彼女、走ってるときに最初から最後まで白いハンカチを握りしめててさ」
私「うん?なんで、汗でも拭いてたのか?」
Y「いやさぁ、最後のインタビューで彼女が言うにはさ、自分は走ると口につばがたまるんだって。それを道に吐き出すのは、せっかくきれいに舗装された道路をよごすのはいやだっていうんで、ハンカチでぬぐってるんだってよ」
私「・・・・Ladies and Gentlemen のお国柄かぁ・・・そっちの方もすごいや・・・」
マラソンが歩いてきたる野菊かな(細川加賀)