♬ かおるちゃん おそくなってごめんね
かおるちゃんおそくなってごめんね
花を探していたんだよ
君がすきだった クロッカスの花を 僕はさがしていたんだよ・・・・♪
(『花はおそかった』歌:美樹克彦 作詞:星野哲郎 作曲:米山正夫)
昭和53年のこと、Yの部屋で懐かしのメロディーという番組を見ていた。
Y「なつかしい歌だなぁ。おい、のりも。この歌のクロッカスの花って知ってる?」
私「え?俺たちが中学2年生ころの歌だろ、これ。知らないけど、それがどうしたんだよ」
Y「いやさぁ、このクロッカスの花ってあまりにも唐突すぎてさ。俺は、中学生の頃、どんな花だろうって思ってたんだよな。今もあるかなぁ・・ええっと図鑑・図鑑・・」
と言って、棚から花図鑑を探して取り出したのである。
Y「あぁぁ、これこれ」
Yが指を指したところに、白と紫の花が咲いた写真がでており、その記述に『アヤメ科の花で、球根を10月から11月に植えると、春に花が咲く。温帯地域によく見られる』とあった。
私「ふううゥゥン・・・それがどうした?」
Y「お前ねぇ、この歌詞を考えてみろよ。恋人が今、重い病でベッドに居て、ちょっと不良の恋人が彼女の好きな花を探して、やっと見つけて病院に駆けつけたら、間に合わなかったってシチュエーションじゃないか。そのときの花がクロッカスって、何かロマンチックじゃないか」
私「うん、そりゃまぁ・・・映画でいえば『理由なき反抗』のジェームス・ディーンの感じがあるのはわかるさ。だけど、なんでクロッカスでなきゃいけないの?」
Y「そんなことお前・・・そりゃ作詞家に聞かなきゃわかんないけどさ。探す花がすぐに見つけられるものじゃあ、ストーリーにならないじゃないか。ひとことで聞いても分からない花で、なにかこうロマンチックでさ、探し回らないと見つからないような花だってことが必要なんだろ。いわば、ストーリーに必須要素なんだよ」
私「だとするとだよ、辞典なんかで、しらべちゃいけないだろ?」
Y「・・・・・・・・」
撫子や濡れて小さき墓の膝(中村草田男)