昭和53年ころのこと。ハチヤ君と。
ハ「のりもさん、きのう師匠と月の話しになったんですよ。それでね、『ちゅうしゅう』の月って知ってます?」
私「え?中秋って秋の真ん中だからだろ。たしか旧暦の8月、今でいう9月の満月の頃で、このときの月がさえざえとしてきれいだから、名月だって言うんだって。大学の悪友たちと話してた覚えがあるよ」
ハ「ええ、そうですよね。だけど中秋って中という字を書くのと、ニンベン付きの仲っていうのとの二つがあるんですよね」
私「え?」
ハ「ね。知らないでしょ。ニンベン付きの仲は、秋全体の真ん中、旧暦の8月すべてをさすんですって。それでその8月の、『どまんなか』15日の満月の日を中秋っていうんだそうです。だから、秋のなかの、月ちゅうの月、ってことになるんでしょうね」
私「おおお・・・ダーツなんかの、的の『どまんなか』ってことかぁ・・・・」
ハ「なんだか品がないなぁ、そのたとえ・・・」
私「ははは。だけど、15日に満月が出ればいいよ。だけど、曇ったり雨だったりしたら台無しだよなぁ」
ハ「だから、そのときは昔から『中秋無月』って言って、満月を思ってその情緒を味わう『ことば』がありますよ」
私「うん?字がちがわない?無月じゃあなくて、夢月の方がよくないか?」
ハ「・・・・・・・」
仲秋の韻を畳むや後の月(正岡子規)