昭和53年、高校時代からの親友Tと大阪日本橋の家具屋へ来ている。
私「おい、どうなんだよ?」
T「うんンンンンン・・・・もうひとつなんだよなぁ・・・」
私「気に入ったのにしろよ。いい加減なものを選ぶと、後悔するぞぉ」
どうやら、Tは候補の物を2つに絞ったらしい。
ひとつは白い塗装がされた電話置きであり、もう一つが木目のしっかりした作りで、重厚感ある物であった。
私が見ても、木目の方が上品でいい品である。
T「決めた、こっち」と、白い方を指さす。
私「おい、やめろよ。何遠慮してんの。結婚祝いで俺が、お前に送るんだぜ。どう見ても、この木目の方だろうが」
T「だけどさぁ・・・・これちょっと値段が高いぜ」
私「あのな、結婚祝いだぜ。特別なんだから。お前の必要な物をプレゼントするっていう約束じゃないか。値段は関係ないの。おふくろにも、そう言われてんだから」
T「うぅぅぅンンン・・・・・」
およそ40年後、用があってTの自宅に、初めてゆくと、台所のそばに電話が置いてあった。
その電話台をTが、わたしに指さして、
T「これ、お前にもらった電話台」
え、・・・まだ使ってるの・・・・・・?
(プレゼントの仕甲斐がありました・・・)
告げもせず告げられもせず蛍の夜(吉原文音)