雨降りの昼下がり、学舎のホールロビーでハチヤ君と。
私「よく降るなぁ・・・」
ハ「そうですね。ところで、のりもさん、旧暦6月をなんて呼ぶか知ってます?」
私「え、水無月だろ。たしか、雨ばっかりで水が多いのに、反対の水がないって意味だから、おかしいって高校生のときから言ってたもんな」
ハ「そうですよね、理由って知ってます?」
私「なんでも、日本じゃ田植の時期だから田の中に水が張られて、他のところじゃ水がないからだって聞いたよ」
ハ「そうそう、よく知ってますねぇ、そういう説もあるんですよ」
私「ということは、いつものように、ちがうウンチクがあるんだな?」
ハ「はは・・・。実は、水無月の『な』っていうのは英語の同格of
と同じ働きをする、連帯助詞だっていう説があるんですよ」
私「え・・・?」
ハ「つまり、無(な)っていうのは、まったく意味がなくて、水と月をつなぐ助詞、単なるつなぎの文字で『水の月』っていうことをあらわすにすぎないんですよ。いわば、『な』の音に無という字を当てはめただけなんです」
私「それじゃあ、ある意味、『みずづき』ってすればよかったわけかぁ」
ハ「それじゃぁ、余韻がないじゃないですかぁ、『やまとことば』の特徴ってやわらかい余韻でしょ。たとえば、水面(みなも)とか水瀬(みなせ)とかふわぁぁんとした語韻がいいんですよ」
私「それにしても、無なんていう誤解されるような字をつかわなくてもなぁ」
ハ「まあ、それは な(無)かったからでしょ」
私「・・・・・・(しゃれかよ)・・・・・」
うすうすと透けて水無月豆腐とや(後藤比奈夫)