昭和52年の4月。
大学院では、学生に勉強部屋として、数人共有の研究室が割り当てられる。
われわれ同期は地上2階、地下1階の学舎内で、10人が一緒に地下の大部屋に入ることになった。
みんな仲はよかったが、特に民法を専攻するK平とは、よく雑談をした。
そのときの話し。
私「さむいなぁ・・・」
K平「ああ。きのう、おとといは最高気温が20度をこえてたもんなぁ。今日は15度が最高だってさ」
私「ええぇ、15度?まるで寒の戻りだなぁ」
K平「それはオーバーだよ。それに寒の戻りっていうのは、2月の立春を超えた日の温度より低い、真冬の寒さが戻ってくることを言うんだぜ」
私「そうなのか?」
K平「ああ、広辞苑なんかにそう出てるぜ。だから、立春が7度くらいあるとしたら、1・2度の日になるってことだろう」
私「その差5度か」
K平「そうなるなぁ」
私「それならさ、今日と昨日の温度差は5度だぜ。明らかに寒の戻りじゃないか」
K平「・・・・・・」
花冷えや時計は刻をあやまてり(角川源義)