昭和60年頃の夕。大学の研究室に行くと、Nがみんなと話していた。
N「おぉ、のりもぉ。めずらしいなぁ、スーツにネクタイなんか締めて。どうしたんだよ。何かあったのか?」
私「言ってたろ。今日からK大での講義だよ」
N「お!大学非常勤としての初講義かぁ・・・
ま、仕事だからスーツは当たり前かぁ・・・
馬子にも衣装ってとこだな。で、どうだった?」
私「うん・・・びっくりした」
N「なんで?」
私「カラーだった・・・」
N「え?なんだよそれ?」
私「チャイムが鳴って、教室に入ったんだよな・・・
それで教壇に立ったらさ、
フルカラーの画面映像が目の前に広がってんだよ」
N「え?」
私「いままで、経済系の専門学校なんかで授業してたろ。
あのときの教壇から見た映像は、いえば水墨画なんだよな。
今日のK大は文学系の学部だろ。女子学生が多いこともあるんだろうなぁ、
極彩色の西洋画なんだよ。
あんなに違うんだなぁ・・・ほんと、びっくりしたよ」
N「ははは・・・フルカラーの西洋画かぁ・・・なるほどなぁ。それで?」
私「うん・・・色酔いしそぅ・・・頭がクラクラしてる・・・」
N「・・・ばか・・・・」
ふり返り見て花の道花の中(稲畑汀子)