昭和55年頃、大学地下食堂でハチヤ君と話していた。
ハ「のりもさん、この前 僕、研究室のひとたちと、
薬師寺に春の遠足にいったんですよぉ」
私「え?あの・・・凍れる音楽っていうやつ?」
ハ「あれ?のりもさんでも知ってるんですね」
私「もぉ・・・ばかにしてるだろ。中学のときに歴史かなんかで ならったよ。
確か東塔の上に棒の部分の 水煙 っていうのがリズミカルなんで、そういうんだろ。
えっと・・・フェノロサが言ったとかいう」
ハ「棒って・・・・もぉ・・・あれは塔の大事な支柱なんですよ。
それはそうと、凍れる音楽っていうのは、何も東塔だけの話しじゃなくて、
薬師寺の伽藍の建築物全部をみて表現したんじゃないかって言われてるんですよ」
私「うん?そうなの?」
ハ「ええ。凍れる音楽っていうのは、
もともとゲーテなんかが文学的比喩として使っていて、
建築物なんかのことを errstarte Musik (固まった音楽)って呼んでたんですって。
それが英語に翻訳されたときにfrozen Musicっていうことになって、
岡倉天心なんかが フェノロサの言葉を訳して 凍れる音楽ってなったわけですよ」
私「ははは・・・二回転してるわけかぁ・・・」
ハ「二回転って・・・まぁ・・・だけど初めは固まったっていうのを凍れるっていう訳をするってちょっとおしゃれだと思いません?」
私「なんで?」
ハ「だって、固まったっていったら、もう動かないっていう意味が強いけれど、
凍るっていったらあったかくなって氷が溶けだしたら、
うごきだしそうじゃないですかぁ・・・
薬師寺の建物全部がリズミカルに動き出すんですよ・・・
いいなぁぁ・・・・
♪フン フン フン はちが とぶ~・・・」
私「・・・・・・」
花を見てお身拭い見ぬ恨かな(河東碧悟桐)