昭和54年頃、Yの家に遊びに行くと、Yが部屋でFMラジオから流れるクラッシック音楽を聴いている。
私「おい、なんだまたクラッシックかよ」
Y「おぅ、のりも。また油売りに来たのか?」
私「もぉ、何言ってんだよ。寂しいだろと思って相手しに来てやったんじゃないか」
Y「ははは・・まぁ座れ。これ中学生のとき音楽の授業で聴いたろぅ?覚えてるか?」
私「え?」
Y「ま、お前にゃ無理か。ベートーベン交響曲第三番、エロイカだよ。
別名『英雄』とも言うな。この曲の有名なエピソード知ってるか?」
私「そんなの知らねえよ」
Y「あのな。ベートーベンはこの交響曲を作るにあたって、
当時、人気絶頂だったフランスのナポレオンに捧げるつもりで作曲してたんだよ。
ところが、ナポレオンが民衆を弾圧するかのような皇帝の地位についたんだよな。
それでこの曲が完成したとき、
ベートーベンは『この俗物め』って叫んで、
ナポレオンに捧ぐと書かれた表紙を破り棄てたっていうんだぜ」
私「へぇぇ~~~ そんなこと、習ったかなぁ・・・」
Y「ばか、これは俺の教養だよ」
私「うそいえ。そこに百科事典が開いたままじゃないか」
Y「ははは・・・『もっと光を』!!!・・・・」
私「・・・・・(それは、ゲーテだろうが)・・・・」
哲人の思索に眠る春日かな(民部里静)