♯ 潮のながれが急なため、いったんエンジンを止めて再度出発いたします・・・
もうしばらくお待ちください・・・
スピーカーから高速艇の乗客に対して、案内があった。
船の窓からは川の濁流かと思われるほどのうねりが見えた。
やがて、エンジンがウンウンウンと叫び出すとともに、
川に向かって進みはじめ体に感じるほどの抵抗を受けながら、
平坦な海へとたどり着いたのである。
そのあと20分ほどして、到着地である広島港に入った。
なにやら、冷や汗の出る初めての経験であった。
大学に戻ってこの話しを同期たちにしてみた。
A「松山から広島までの高速艇に乗ったんだろ?
瀬戸内海って静かな海じゃないのか?」
B「いやぁ、知らないのか。
瀬戸内って潮の流れがあって、東西両方に流れてるんだぜ。
高速艇って早いけど、小さな船だろ。瀬戸内のあの潮のながれって案外強くて、
小さい船だと一挙に横切るのがむずかしい場合があるんだぜ」
私「さすが、Bは香川出身だなぁ。そうなのか?」
B「ああ、潮の流れの早いところだと10ノット、
だいたい時速18キロくらいの流れの速さになるっていうぜ」
A「そういやぁ・・・瀬戸内ってさ、源平合戦の舞台になってたろ。ええっと・・・」
私「壇ノ浦の戦い!」
A「そうそう。あれって、今頃の時期だろ」
B「そうだよ。あれは瀬戸内でも山口県の方だけどな。
潮の流れが変わって平家が源氏に負けるんだよ。
まさに瀬戸の潮の流れが勝敗を分けたんだよなぁ」
A「のりもぉ、いい経験したなぁ。義経八艘飛びの気分はどうだ?」
私「飛んだのはおれじゃねぇよ。高速艇に聞けよ!」
・・・ははは・・・
二つ三つ船も置きたし春の海(子規)