昭和54年ごろのこと。大学地下食堂でハチヤ君との話し。
ハ「あったかくなってきましたね。のりもさん。
『お水取りが終わるとあったかくなる』
っていうのは本当ですねぇ」
私「ああ・・・おふくろがよく言ってるよ。
そういやぁ、昨日のテレビで松明の行事を写してるニュースがあったなぁ」
ハ「お松明でしょ。あれってどういう意味があるか、知ってます?」
私「え?知らない。
厄除けのためにするんじゃないの?
よくあの火の粉を被ると、無病息災に過ごせるとか言うじゃない」
ハ「それは民間信仰ですよ。
だいたいお水取りっていうのは、修二会っていう行事なんですよね」
私「うん・・・」
ハ「旧暦の2月に奈良東大寺で開催される修行の会なんで、修二会なんですね。
これは旧正月に五穀豊穣を祈る祈念祭から始まったってされるんですけどね、
奈良時代になって
東大寺の十一面観音に清水を献上してお供えをする行事とつながってできたんで、
お水取って言われてるんですよ」
私「ほぉぉ~~~。で、お松明わ?」
ハ「お松明って、昔は小さな火で足元を照らしてお坊さんたちが二月堂にゆく、
いわば観音様の前で法要をするための
『明り取り』の手段だったんですよ」
私「ふぅぅンンン・・・明り取り? それでなんであんな大きな松明になったの?」
ハ「よく分からないんですよ。
なんでも、江戸時代にあの松明が大きくなって、
演劇のようなひとつの 見せ場 のようになったんだってことなんですがねぇ。
春を呼ぶ行事って、喜びとかにぎわいを大切にしたいじゃないですか。
そんな心映えっていえるんじゃぁないんでしょうかねぇ」
私「うん・・・演劇だっていうなら・・・わからんでもない・・・・」
お水取り過ぎし寒さを鹿も知る(能村登四郎)