ある大学の講師控室で国文学者のF先生と話していた。
ハチヤ君との桃色吐息バナシをしていたときのこと。
F「ははは・・・春のこぼれ花はよかったなぁ。ロマンチストですねぇ」
私「そうなんでしょうねぇ」
F「ところで、のりも君。和歌では梅と桃と桜ってどんなふうに扱われるか知ってますか?」
私「え?あまり考えたことがないですけど・・・」
F「これは、僕の感覚ですけどね。
梅は厳しい冬に耐えて咲く『凜とした美しい女性』。
桃は『あでやかな強い女性』、
桜は春が盛りのいわば『みめ麗しきたおや女』
なんですよ」
私「はは・・・なるほどねぇ・・・」
F「面白いのは、紫式部が和歌で桃と桜の花を比較する歌があってね」
私「ええ・・・」
F「『桜を瓶に挿して見るに、とりもあへず散りければ、桃の花を見やりて
‘’折りてみば 近まさりせよ 桃の花 思い隈なき 桜おしまじ‘’』
(紫式部集31)
(桜を少し折って瓶に入れて飾ったら、すぐ花びらがはらはらちってしまった。
そのときに、遠くで咲く桃の花を見て、
「桃の花よ。花瓶に挿してあなたを見たなら、遠くで見るよりも近くで見た方がもっときれいに見えるでしょうね。わたしの心を知らないで、すぐに散ってしまう桜なんて、もう名残惜しいなんて思いませんからね」)
って詠うんですよ。
私「ははは・・・飾ってすぐに散ってしまうなんて、
よっぽどくやしかったんでしょうねぇ」
F「ええ・・・
だけど・・・そこがサクラのいいところでもあるんですよねぇ・・・」
・・・・・・・うううぅぅンンンン・・・・・・・・
けふまでの 日はけふ捨てて 初桜(加賀千代女)