♬ 咲かせて 咲かせて 桃色吐息
あなたに抱かれて こぼれる華になる
海の色に染まる ギリシャのワイン・・・
咲かせて 咲かせて 桃色吐息
きれいといわれる 時は短かすぎて・・・・・♪
昭和60年頃のこと、大学の地下食堂で後輩のハチヤ君が鼻歌をうたいながら。
ハ「ねぇ、のりもさん。この歌、いまの時期に合うような気がしません?」
私「え?どうして?失恋でもしたの?」
ハ「ちがいますよぉ・・もぉぉ・・。春でしょ。
この時期から梅・桃・桜って、
あわぁい桃色の花が咲きはじめるじゃないですか。
この歌詞の桃色の吐息をつくなんて、ちょっと文学的じゃありません?
それに、ピンクって言わないで桃色って言ってるのが
妖艶で日本の花っていう感じがするじゃないですか」
私「ははは・・・そうとらえるのかぁ・・・。
だけど梅の花ってピンクだった?どちらかというと、紅梅は朱色じゃないの?」
ハ「そんなことないですよ。種類によってちがうんですから。
淡い桃色の花が咲く梅もあるんですよ」
私「そうなの?」
ハ「ええ。春告花って言って、
たしかに梅は一番先に咲いて、赤い小さな花しかないように思われてますけど、
種類によれば春の二番目に咲く桃によく似た梅があって、
どうやって区別するのかが、よく本なんかで解説されてるんですから」
私「なるほどね。
だけど、この歌詞でいうと『こぼれて華になる』っていうのは
やっぱり人間のはなしで、季節のこととはちがうだろ?」
ハ「のりもさん!
『こぼれ花』っていうことばがあるんですよ。
これはね、『ちりこぼれた梅の花』っていう意味だったり、
『咲きほこってこぼれ落ちる花』っていう意味があるんですよ。
春という季節が木々を抱いて、その腕のなかで桃色の花がイッパイに咲きほこって、
その腕から花びらがあふれてこぼれおちる・・・・・なんて。
そう考える方が、豪華ですてきじゃないですかぁ・・・・」
私「・・・・・・・・」
春浅き水にきらきら日の舞へる (井上日石)