昭和53年頃のこと。大学地下食堂で東洋法制史専攻のハチヤ君との話し。
ハ「のりもさん、今日は更科そばの日だって知ってます?」
私「え?更科そばって、あの白いそばのこと?」
ハ「そうですよ。あのそば、なんで更科っていうか知ってます?」
私「そりゃ、信州発祥のそばだからじゃないの?更級日記とか昔から信濃あたりは更科っていうじゃない」
ハ「と思うでしょ。実はね、もっとくわしい理由があるんですよ。知りたいですか?」
私「うん・・・教えてよ」
ハ「えへん、でわ。もともと『さらしな』って、更級って級の字を書いたんですよね。昔から、信濃の国あたりには『さらしな』っていう、姥捨て伝説の地があって、その場所だけを『さらしな』って呼んだんだそうです」
私「え?姥捨て伝説?」
ハ「ええ。それでね、昔から信濃の国を指すときに、枕ことばとして『更級の』とか言って、歌を詠んでたのが、やがて信濃全部を表すことばになったんですよね」
私「うん・・・『姥捨て』と、『さらしな』と『更級』っていうのがむすび付かないような気がするんだけどなぁ・・・」
ハ「まぁそこは、『やまとことば』での『さらしな』っていう地名に『みやこびと』が、漢字を当てたんじゃないかっていうことなんですがね。それで、江戸時代になって、信州出身のソバ打ち名人が領主のすすめで、江戸に真っ白なそばを出すそば屋を出したんですよ。そのとき、領主『保科』の科をとって、『更科』に改めたんだっていうんです」
私「ふぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・」
ハ「どうしたんですか?」
私「おなか いっぱい!」
ハ「・・・・・・・・」
戸隠の雪解けの水に蕎麦さらす(猪鼻純枝)