昭和53年のこと。大学研究室でOと話していた。
O「今日は森鴎外の誕生日なんだって。知ってる?」
私「うん?よく知ってるな?」
O「あぁ・・・新聞で見たからさ。おれ鷗外好きなんだよなぁ」
私「え?そうなのか?」
O「ちょっと、かっこいいじゃないか。医者なのに文学にも造詣が深くてさ。留学先もイギリス・フランスじゃなくてドイツっていうところが、なんとなく硬派っていう気がしないか?」
私「イギリス・フランスって軟派なのか?どうして?」
O「うん。俺の感覚だけどさ。大学の学部のときは第二外国語にフランス語を勉強したんだよな。そのとき思ったのはさ、フランス語って実に優雅でさ。子音は発音しない、動詞の変化はある意味ばらばらで、よくいやぁ自由闊達でフレキシブルって感じなんだよな」
私「うん・・・まぁ・・・ドイツ語は動詞なんかでも規則変化・不規則変化はあるけど、わりときっちりしてるもんなぁ」
O「だろ。おれの性格にもぴったりだと思わないか?」
私「そこは何とも言えんがなぁ・・・」
O「それにさ、鷗外はドイツへ留学してドイツ女性を口説いてんだぜ。日本にまでその女性が追いかけてくるくらいなんだから・・・もう・・・大尊敬!!!」
私「・・・・(そこかよ)・・・・」
舞姫はリラの花よりも濃くにほふ(山口青頓)