鬼わぁ~そとぉ 福わぁ~うちぃ~・・・・・
昭和54年の夜、遠くから豆まきの声が聞こえていた。Yの部屋で。
Y「お、やってるやってる・・・節分の風物詩・・・」
私「お前はしないのか?」
Y「もうやったよ。台所と居間に豆を撒いといたからさ。掃除がたいへんだっておふくろが言うから、ちょっとにしておいたのさ。お前はどうなんだよ」
私「ああ、ここへ来る前に済ませてきたよ」
Y「そうか・・・どうだ豆たべるか?」
私「いいよ。それも食べてきた。これ以上食べると腹壊すよ」
Y「なさけないやつだなぁ。厄除けに歳より1つ多めに食べなきゃいけないんだぜ?ちゃんと食べたのかよ」
私「ああ。だけどお前は食べすぎだよ。今見てるだけでも優に30は超えてるじゃないか」
Y「はは・・・くせになるんだよなぁ・・・ちょっとうまいんだ、煎り豆って。これを当てに一杯やるか?どうだ?」
私「いらない。コーヒーがいい」
Y「まったくぅ・・・こんな時間にコーヒーなんて、眠れなくなるぞ」
私「望むところだよ。朝まで話し合おうぜ」
Y「いらない・・・鬼はそとぉ~~~」
私「イタイ・・・俺に投げるなよ・・・もぉ」
わがむかし 節分の豆 菓子とせり(平畑静塔)