昭和58年頃のこと。Yの家へゆくと。
私「お~い、居るかぁ」
Y「おう、のりも」
私「何してんの?おい・・・えらく部屋が寒いじゃないか、どうしたんだよ」
私「何言ってんだよ。もう・・・どうしたんだよ」
Y「ううぅぅぅ・・・さっきさ、ストーブが故障してな。
今こたつを立てたとこなんだよ」
私「そりゃそうだよな。この部屋は板張りだもんな。
たしかにストーブがなきゃ寒いよなぁ」
Y「ああ・・それでな、
こたつであったまりながら、使い捨てカイロを腰に貼ってんだよ」
私「ああ・・・テレビで関西の落語家が、
弥生人になって『ちゃぷい ちゃぷい』って言って、宣伝してるやつかぁ・・・
だけど、それって危なくないのか?」
Y「なんで危ないんだよ?」
私「あったかくなるってことは、火がついてるってことだろ?
やけどしたり、何かに燃え移って火事になったりすることはないのかなぁ・・・・」
Y「お前はもぅ・・・こわがりだよなぁ・・・
今までのベンジンを入れたカイロだってそんなことを言ったら危険だったじゃないか。だいいち、そんなに危ない物だったら、
こんなに長い間、販売が許可されてるわけないだろ?」
私「そうかなぁ・・・」
Y「そうだよ。お前にもひとつやるから、使ってみろよ。ほら」
私「俺はいい」
Y「なんで?」
Y「・・・・ばか・・・・・」
三十にして我老いし懐炉かな(子規)