norimoyoshiakiの日記

昭和40年の後半からの学生生活と、その後のことを日記にしています。ご意見をお待ちしています。

いちじく その2

 イチジクを食べ損ねた数日後に、Yの家へ行った。

私「おい、この前の名誉挽回。イチジクの起源を教えるぜ」

Y「なんだよ、調べてきたのかよ」

 

私「ああ、まあ聞けよ。イチジクの語源はペルシャ語の『Anjir』なんだってさ」

Y「うん?なんでペルシャが出てくんの?」

 

私「そりゃまぁ、イチジクの原産地だからだろ」

Y「えらくまぁ、大きな話しになってきたなぁ、で?」

 

私「さて、その『Anjir』がインドヒンズー語で『Injir』に、中国に伝わって『映日』(イェンジェイ)となったんだ」

Y「おおぉぉ、日本にちかづいてきたな」

 

私「ははは、それでな。イェンジェイは木のことだからこの木に成る実として『果』(クォ)が付いてイェンジェイクォとなって、イェンジェンクォ・・イジェイク・・イチェジェク・・イチジク・・となったわけさ」

 

Y「おい、落語じゃあるまいし、ほんとかよぅ・・・」

 

私「はは、音が変わっていくっていう、一つの説だよ。そりゃあ、ことばだから、ありうることさ」

Y「ほかにもあるのか?」

 

私「ああ、いちじくっていうのは、すこしづつ熟してゆくんだってさ。つまり『一熟』(いちじゅく)、いちいち熟していくっていうような意味といわれて、イチジクになったってよ」

 

Y「おぉぉ、あとの説の方が、なにかきれいだなぁ」

 

私「それでな、このまえ、お前が言ってた無花果の字な。あれとの関係でいうと、イチジクって読むのは、無花果っていう字のいわば『当て読み』なんだぜ」

Y「え、当て読みってなんだよ?」

 

私「正確には『熟字訓』っていうんだけど。俺は、『当て字』の反対のようなものだから『当て読み』でいいと思ってんだ」

Y「なんだよそれ、勝手に名前つけちゃだめだろうが」

 

私「まぁ聞けよ。『明日』っていう字があるだろ?あれ、『あす』って読ませるじゃないか。『明』に『あ』、日に『す』って読ませる本来的な要素はないだろ?ただ、つぎの日のことを日本では、むかしからアスとよんでたから、それをあの字をアスと読んだけなんだよな。それを熟字訓っていうんだってさ。いちじくもそうだと思わないか?」

 

Y「ウ~~~ン・・・・ほんとかよぉ・・・なんか騙されたような・・・・」

 

       無花果の日々育ちゆく雨なれや(安住敦)