昭和53年の年末にYの部屋で。
私「きのうさ、隣の駅前の本屋で雑誌を買って帰るとき、駅のホームで
『まぁぁっっっしろな! ユリ』を抱えて、
電車を待ってるOLさんがいたんだよなぁ・・・
あんまりキレイぃんで びっくりしたよ」
Y「うん?花にか? OLさんにか?」
私「ううぅぅぅンンン・・・・りょうほう」
Y「何言ってんだよ、もぉ・・・それで?」
私「うん、それでな、ユリってさ、たしか、夏の花なんじゃないのか?なんで今頃、
OLさんが、あんな、まっしろで大きな花を持ってんだろ?
この時期に咲くユリってあるのかなぁ?」
Y「え?ユリって、冬に咲かせることもできるんだぜ。
それに、OLさんが持ってたんだろ?
たぶん、お花のけいこ帰りかなんかで、教室で使ったユリを持って帰るんだろうさ。
家に飾るんじゃないのか」
私「あぁ・・・そうなのかぁ」
Yが花図鑑をとりだして広げた。
「どのユリだった?」
私「たぶん・・・・これだなぁ・・・おっきい花だったから・・・」
Y「カサブランカか・・・典型的なお祝い、祝福のユリだもんなぁ。
花屋さんに頼めば、冬でも手に入るよ」
私「そうなのか?」
Y「ああ・・・花言葉も、『純潔』『無垢』『高貴』だってさ」
私「へぇぇぇ~~~・・・・そうすると、きのうのOLさんの風景って・・・
映画のワンシーンか一幅の絵 になるなぁ・・・」
Y「・・・・(え?)・・・・」
百合持てばかならず百合を見られけり(加藤秋邨)