昭和52年、Yの部屋にいると静かに小雨がふってきた。
私「おい、雨だよ・・・今年はよく降るなぁ・・・」
Y「ああ、また寒くなるなぁ・・・秋の終わり、冬のはじまりだなぁ・・・」
私「この時期の雨は、薄皮をはがすように季節を変えていくからなぁ」
Y「あ、薄皮で思いだした。のりも、『あいはぎ』って知ってるか?」
私「え?『あいはぎ』?カワハギなら知ってるけど・・・鍋にしてもうまいんだろ?」
Y「ばか、『あいはぎ』だよ。
和紙に書かれた絵なんかを、二枚に薄く剥ぐことをいうんだよ。
教養のないやつだなぁ」
私「もおぉぉ・・・そんなこと、急に言われたって、分かるわけないだろ。
それで、その『あいはぎ』がどうしたんだよ」
Y「うん、だからさ。この雨が『あいはぎ』にたとえられるような気がしないか?
今日の雨が秋と冬の二枚の絵に分けるなんて、
ちょっと、いいたとえだろ?」
私「あれ?お前にしちゃ、たまにはしゃれたこと言うじゃないか」
Y「たまには、だけ、余計だよ!!!」
・・・・ははははは・・・・・・
薄けむる秋のおわりの あいはぎ雨(のりもよしあき)