5月のある日、ラジオを聞きながら本を読んでいると、落語中継となった。
演目は分からないが、前振りで「『売り家と唐様で書く三代目』と申しまして、とかく三代目になると・・・・」とはじまり出した。
私は、うん・・・この川柳は、商家なども三代目ともなれば苦労知らずで、芸事は達者だが、商売は出来ずに家をつぶしてしまうということを、風刺的に詠んだものというのは知っていた。
ただ、気になったのは、唐様であった。
調べてみると、『中国風の書跡のこと。特に江戸時代の学者間で流行した書体を指し、墨跡に明・清代の書風を加味したもの』とある。
唐様とあるんだから、まぁ、そうだろうなぁと思いながらも、しかし、江戸時代の川柳なのだから、庶民じゃあ唐様かどうか分からないんじゃないかなぁ・・・などと考えてその日が終わった。
後日、たまたま、ハチヤ君とこの話しになった。彼いわく、
ハ「のりもさん、あの唐様っていう書体は江戸時代に道楽人が趣味で習う書体なんですよ。いわば三味線とか常磐津とか踊りなんかの道楽の一種なんですって」
私「うんうん、それで?」
ハ「だから、唐様で売家って書くってことで世間様に道楽者ですということ、その道楽が過ぎて家をつぶしましたってことを客観的に表現してるんだっていうんですよ」
私「そうか、実際に売家張り紙を見てるんじゃないということでもあるわけかぁ」
ハ「そうですね、だから庶民が張り紙を見て『あ、唐様で書いてある』なんていうんじゃなくて、もっと抽象的に道楽者は家をつぶすということを川柳にしてるんでしょうね」
私「・・・なるほど・・・・」(わたしの考えは、浅はかでした・・・)