さらに話しがつづいている。
C「それでもさ、もう一度聞くけど、なんで麦秋っていう題名がついてんの?」
B「それがわかんないんだよな。たださ、麦秋は晩春の続き物だっていわれてるんだよな」
A「うんうん、それで?」
B「これは想像だけどさ。晩春は婚期の遅れた主人公が、自分が結婚すると父親がひとりになることを心配したことなどで、結婚しないことを中心にした物語だろう。だから盛りを過ぎた時期になりましたよっていう前振りのはなしということで、晩春なんだろ。ところが、次作の麦秋は、主人公が遅ればせながら、自分の意思で旦那さんを見つけるわけさ。つまり、収穫の時期となりましたという、麦の実り時期でやがて刈り入れとなるということが中心のはなしで、麦秋じゃないのかっていうことさ」
C「うん、筋道としては通ってるよなぁ」
A「だけど、それなら『本来の秋』の文字を使う題名でもいいんじゃないのか?」
B「ばかだなぁ。主人公の女性はこれから結婚して、人生の盛りを迎えるんだぜ。遅い春ではあったけど、まだ、人生を折り重ねなきゃならないんだから、秋にしちまえば、冬がすぐ来てしまうじゃないか。ここは春でなきゃだめだろ」
C「うん、そうでなきゃぁ希望がないもんなぁ」
B「そうだよ。時代背景を考えろよ。戦後すぐの昭和24年から26年だぜ。これから、世の中が復活して、盛りを迎えるという希望が込められているとも考えられるだろぅ」
A「なるほど、確かにそうだよなぁ・・・よく考えてあんなぁ・・・」
そうかどうかは分かりませんが・・・・(天のこえ)