大学研究室で同期たちと。
A「もう春もおわりだなぁ・・・」
B「ああ、晩春ということだよな。明日から、ゴールデンウィークがはじまるもんなぁ」
C「だけど、休みが連続じゃないから、いわば、ぼこぼこ穴があいているから大変だよ」
A「どうして?」
C「俺にとっちゃあ、キツイ講義は休みにならないんだよ」
A「そうかぁ、休みの日とはいえ、次の日のことを考えると、気が抜けないもんなぁ」
B「しかしだよ。この季節はいいなぁ。温かいし、ほんわかとして眠くなるし、食べる物なんかも新物が多くっておいしいしさ。きのうなんか、たけのこご飯とイイダコの甘辛煮がでてさぁ」
A「おお、季節そのもののごちそうだよなぁ。ところで、晩春っていうことでの芸術って何かあった?」
C「ああ、その名前の映画があったなぁ。前に一度見たことがある」
B「うぅぅんと、小津安二郎の『晩春』だろ。主演があの美女の誉れ高い原節子でさ」
A「おお、そうそう」
B「だけど、あの小津作品っていつも笠智衆が出てくるんだよな」
C「彼がいいんじゃないか、いい味だしてるんだから。それに小津作品って定位置で画面を撮って、時の経過や人の心情の経過をあらわしてるんだぜ」
B「そうなのか?」
A「ああ、そういう表現形式なんだってさ。だから動きが少なくて、淡々としてるだろ。それが静かな画面構成になってて、またいいんだっていう人が多いんだよ」
なるほどなぁ・・・・・感覚的には、そりゃ晩春だよなぁ・・・・
晩春の瀬々のしろきをあはれとす(山口誓子)