映画「晩春」のはなしが続いている。
C「ところでさ、あの映画の中に出てくる『お能』シーンってあるだろぅ?あれは何?」
A「何って、『杜若』だろ」
B「え?」
A「伊勢物語に出てくる杜若だよ。中学か高校で習ったろう?在原業平が三河の国へ旅した時、杜若の精が出てきて、『かきつばた』って言う字で歌を詠むっていう件があったろ?」
C「そんなの覚えてないし、お能なんかは分かんないよ」
B「しかし、映画のなかで、なんで杜若でなきゃならないんだよ?必然性はあるのか?」
A「そんなこと、俺に聞いたってわかるわけないだろ」
C「だけど、何か理由があるんだろ?」
A「そこは、映画評論家がいろんなことを言ってるよ。能では杜若はほんとうにきれいな演目だから、晩春のヒロインの美しさにふさわしいあでやかな能にしたんだとか、能をみているときの原節子が父親の再婚相手に嫉妬してすごい形相でその女性を見ているときに、妖艶な杜若の舞や音曲がその嫉妬心を盛り上げることになってるんだとか」
B「定説はないのかよ?」
A「ない!! Seeing is Believing! And feel it!(見て、感じろよ!)」
B・C「おい、なんでそこだけ英語なんだよ・・・・」
美しき目高のむれや燕子花(子規)