大学で友人たちと枕草子のはなしとなった。
B「春はあけぼの、夏は夜、秋はゆうぐれ。だろぅ?冬は、なに?」
A「わすれたのかよ、冬はつとめて、だよ」
C「え、なんだよそれ?『あけぼの』『夜』『ゆうぐれ』って、みんな景色・情景だろぅ?清少納言はそれぞれの時期のそうした状況がこころにしみて楽しいって言ってんだろ?」
B「うん、そうだよ。『つとめて』って、頑張ってってくらいの意味で、情景じゃないだろう。なにか破たんしてんなぁ・・・いっかんせい がないっていうか」
A「あのな、『つとめて』って、朝早くっていう意味だぜ。早朝のぴりっとした空気とその情景を示してるんだろ。彼女の頭の中では、破たんしちゃいないんだよ。それと、その続きがあるだろぅ?
『冬はつとめて。雪の降りたるはいふべきにもあらず。霜のいと白きも、またさらでも、いと寒きに、火など急ぎ熾(おこ)して、炭もて渡るも、いとつきづきし』
と、早朝の情景が続くのさ」
C「あれぇ。意味がちがうのかぁ・・・」
A「ああ。お前たちが考えているつとめては、『努めて』とか『勤めて』っていう漢字を当てる方だろぅ?この場合のつとめては『夙めて』って書く方なんだってさ」
B「え、その『夙』ってどういう意味になんの?」
A「漢和辞典ひいてみな!『早朝』って意味と『明日の朝』って意味があるから」
C「ふたつもあるのかぁ、たいへんだよぉ」
A「ふたつじゃねえよ、『むかしから・以前から』って意味もあるよ!」
B・C「・・・・・・・・・・・・」
美しや炭火の白き零落は(鷹羽狩行)