悪友たちとの会話。
A「なぁ、やっとあったかくなってきたなぁ」
B「そうそう、『春はあけぼの ようよう・・・紫立ちたる・・・雲の細くたなびきたる・・・』ってね」
C「また、枕草子かぁ?好きだなぁお前」
B「そういうなよ」
A「ところで枕草子の『紫立ちたる』ってところ、いろんな意味があるって知ってる?」
C「え、単に朝日が昇る前だから闇夜からの色の変化でそう見えたってだけじゃないのか?」
A「ああ、そういう客観的事実だとしてもだよ、なんで紫なんだよ。あえてそんな、きわめて微妙な色の変化なんて言わなくってもいいだろ?」
B「それなら、平安時代は紫が高貴な色をあらわすから、あえて入れたんじゃないか?」
A「うん、それも理屈としては通るなぁ」
C「あるいは、清少納言が『わたしってこんな細かい色の変化まで見てんのよ』って、自慢してるとか」
A「うん、それもありそう」
B「ほかには何か考えられるのか?」
A「さっきも言ったじゃないか。色の変化さ。考えてみろよ。夜の漆黒から、山際の白、紫、やがて朱がまざって明るい白になっていくって、色彩の一大パノラマじゃないか。映像を筆で描いた、空の色が時間とともに変わってゆく情景だって思わないか?」
B・C「おぅ、なるほど・・・春の一大カラー映像だよなぁ・・・」
この頃の夜明の早し軒の梅(鈴木花蓑)