1月31日のことを『みそか正月』と言うそうである。
正月の最後であり、地方によっては正月の祝いとは別に、このときにもお祝いをする風習もあるのだとか。
高校三年になった冬、
母親が「あんた、進路どうするの?お父さんが心配してるんだから、ちゃんとお願いしときなさいよ」
「ううぅぅンンン・・・・」と生返事をしていた。
おやじとは高校生にもなると、直接、話すことがなくなる。
やはり、煙たいものなのである。
おやじが家にかえってくると、そそくさと、自分の部屋へと籠ることが多くなった。
1月の末に、久しぶりに朝5時に目が覚めたので、トイレにゆくついでにおやじの部屋を覗いてみると、ふとんに腹ばいになってたばこを吸っている。
声をかけて、ふすまを開けてなかにはいってゆくと。
わたしの顔を見て、ふとんをめくって「入れよと」と言うので、そのままふとんに潜り込んだ。
「大学・・・行きたいんだけどぉ」
「ああ・・・それで、どこへ行く気だ?」
「関西にある大学の・・・法学部へいきたぃ・・・」
「うん?法学部?やめとけよ。お前にゃあわん。法律なんか、ひとさまの争いに首をつっこんで、いやなことばかりだぞ」
「でも・・・法律関係の仕事につきたい・・・」
「そうか、経済にいって、銀行員になりゃいいのに・・・。ま、好きにしろ」
最後には、納得してくれたようである。
あったかくなってきて、わたしはそのまま布団で眠ってしまい、8時ごろ母親に起こされて目がさめた。
このとき、母親によると、おやじが
「『よしあき』は、もう、みそか正月だなぁ」と言って、仕事へ向かったそうである。
うん?どういう意味だろう・・・・?
三寒の四温を待てる机かな(石川桂郎)