昭和56年9月に。女性銀行員がコンピュータで、1億3000万円を架空名義口座に送金し、その一部を持ってフィリピンに逃走するという事件が起こった。
刑事法専攻のOと、地下食堂での話し。
O「むり!!詐欺罪は成立しないよ。もちろん、窃盗罪もな」
私「なんで?お金を盗ったんだろぅ?」
O「誰を騙してる?彼女は1億3000万っていう数字を架空口座に移して、男に貢いでただけなんだぜ。詐欺ってのは「ひと」つまり生身の人間をだまして財貨を奪うんだよ。窃盗はひとの財貨を黙って盗ることだぜ。この場合、彼女はコンピューターの端末に座って、数字を架空口座に送っただけだろ。刑法上、こうした財産に関する罪にはならないって言われてるんだ。あえて言えば、伝票がないのに、送金したっていう、私文書偽造による罪くらいなもんだなぁ・・・」
私「え、そんなに軽い罪かよ・・・・」
O「おまえさぁ、いちおう法律専攻だろぅ・・全くの素人みたいなこと言うなよ・・・誰をだましてるんだよ、コンピューターをだましたのか?そんなもの、機械をだまして、なんで詐欺になるんだよ。刑事法の常識だよ。ま、コンピューター犯罪については、今後、刑法を改正することになるだろうがな。今は、それ以上の罪に問うのは無理だよ」
私「うぅぅンンン・・・・だけど、貢がせた男もかよ?」
O「あああぁ!!あれは悪いやつだなぁ・・・。シケイだよ、シケイ!!」
さいごは、法律論ではありませんでした・・
・・・おい、それって・・・しっと?・・・
冷房裡器械は億を計算す(朧春一)