雨の上がったある日、ひさしぶりに悪友Kと大学から一緒に帰宅していた。
Kはもともと、理科系志望であったが、気が変わって法学部へ入学していた。
「なんちゃって学生」をよそおってはいるが、頭は良い方で、要領よく単位をとることで、みんなが感心していた。
ふたりで大学前の駅から大阪中心部方面の電車に乗り、途中の乗換駅のホームで電車をまっていると、Kが
「あ、全部のホームにまったく電車が止まっていないぜ。端から端まですべてが見えてる!めずらしいなぁ」と感嘆の声をあげた。
たしかに、1車両すらホームに入っていないから、大きな駅が「がらん」としていた。
わたしは、Kから言われるまで気がつかなかった。
このとき、Kの考え方の一面を見た気がしたのである。
Kはいつでも全体をみてから、自分がどこにいてこれから何をするのかを考えているようである。いまでいえば、GPSで自分の位置をたしかめているのである。
わたしはといえば、自分の行く方向だけながめていて、何か気になるものや、じゃまなものがあると、そこで道草をくうようである。
こいつ、いつも全部をみてるんだなぁと感心した。
雨上がり届けゆくもの鷹の空(稲畑汀子)